日本語文章ルール 「11:間違えやすい語句(4)」

間違えやすい語句(4)

変換ミスや覚え間違いの多い言葉をいくつかご紹介します(さらに続き)。
言葉の意味や由来を考えるのもおもしろいですね。

【興味津々(きょうみしんしん)】
興味深々⇒×
■「深々<しんしん>」とは「身体の奥に差し込むような寒さや、ひっそりと静まりかえる」様子をさすから、「興味」の度合いが強くなる意味には不適。
■「深々と頭を下げる」などの「深々と<ふかぶかと>:深くなっていく様子」と「深々<しんしん>」との意味が混同されていったのかもしれません。
■「津々<しんしん>」とは「水の波紋のようにこんこんと溢れ出す様子」を表すから、「興味」がどんどん「湧いてくる」様子を表すのは、「津々」が適当です。

【極め付き】
極めつけ⇒×
■文法的には誤用とされる「極めつけ」だけど、世間ではよく使われています。
■言葉は「今ここにいる誰もが同じ意味で理解できれば足りる」という側面もあるので、国語という学問(試験)上では「誤り」とされるかもしれないけど、日常語としてはどちらでもいいのかも。
■「極め付き」とは、骨董品などで極上品には太鼓判を押す旨の鑑定が付いたことから「最上級の、もっとも素晴らしい」という意味。

【くしの歯が欠ける】
くしの歯が抜ける⇒×
■実際には同様の意味でどちらも広く使われているみたいだが、本来的には「抜ける」は誤用とのこと。
■人間の歯は歯茎からポンと「抜ける」けど、「くし(昔の櫛は木から彫られていたから)」はポキンと折れて「欠ける」ものであって「抜ける」ものではなかったんですね。
■でも、今は化学繊維や馬毛などのはめ込み型の櫛が一般的だから、現代的には櫛の歯は「抜ける」でもあってるような…。

【言葉を濁(にご)す】
口を濁す⇒×
■諸説あるけれど、「口を濁す」はいまのところ誤用。
■「口を濁<にご>す」は日常よく「言葉を濁す」=「言いづらそうにする」と同じ意味で使われています。
■「口」と「言葉」の意味はもともと通じている(≒同じ意味・用法で用いられる)ので「完全な誤用」とも言い難いみたいです。

【黒白(こくびゃく)をつける】
黒白<くろしろ>をつける⇒×
白黒<しろくろ>をつける⇒×
■でも「こくびゃくをつける」と書いたほうが一般に意味が通じない(わかってもらえない)…??気がしますね。
■諸説あるので「白黒つける」「くろしろつける」というのももはや一般語…?
■「こくびゃくをつける」とは「物事の善悪、勝敗をはっきり示し結論する」という意味になります。

【軽率(けいそつ)】
軽卒⇒×→○?
■「率<そつ>」には「急な、すばやい」という意味があるのがポイント。納得するしかない…?
■「卒<そつ>」にも「急な、にわかに」という意味がある。「脳卒中」など。
■「率」の字を「そつ」って当てる、なんとなくそっちのほうが今や不思議かも…。軽々しく兵団を移動させちゃったというイメージでしょうか。

【けんもほろろ】
剣もほろろ⇒×
■ケーンと鳴く鳥「雉<きじ>」。「ホロロ」これも「雉<キジ>」。
モンハン的ワクワクタイムの余地すら残してくれないで、鳴き声残して猟師の目の前からあっさりピューンと逃げ去ってしまう姿から例えられた言葉らしい…?
■「剣」は、ここでいう「けん」には該当しないから誤字。
■「けんもほろろ」とは「とりつくしまもなく」「ばっさりと」「それはもう冷やかに」というような意味。

【厚顔無恥(こうがんむち)】
厚顔無知⇒×
■読んで字のごとく「厚かましい顔して恥ってもんが無いわ」という侮蔑<ぶべつ>の意味が込められています。
■「無知」=「知らない」ということは、それ自体は別に悪いことではないから誤用。
■「恥が無い」は「厚顔」=「恥知らず」とあいまって、「恥じる心」を尊ぶ日本文化において、
「厚顔無恥」な状態は、かなりマイナスな意味ととらえられていますね。

【功(こう)を奏(そう)する】
効を奏する⇒×
■国語文法的には「効」は誤用らしいのですが…。
■でも『「効果」を得られる(ない)』という意味での「効を奏する(しない)」という使われ方は法律ではされているので、完全に誤用というわけではないようです。
■「功績や手柄」を「身分の高い人に報告する(=奏上する)」ということは、いいニュース(報告)のときのはずで「成功する」とか「狙いどおりに当たって効果が出た」とかプラスイメージで使われているようです。

【ご清聴(せいちょう)ありがとうございました】
ご静聴⇒×
■「ご静聴」は「ご静聴願います」のように使われ「静かに」「聴く」という文字通りの意味だけです。
■「ご清聴」は「ご清聴ありがとう」のように使われ「聞いてくれてありがとう(自分=とにかく感謝の気持ちでいっぱい)!!」というプラスのニュアンスがあります。
■「清」は、聴き手の「聴く」行為を、自分から見て一段高くに置くためにつけたのですね。

【木っ端微塵(こっぱみじん)】
木っ葉微塵⇒×
■「木っ端」「木っ葉」どちらも「こっぱ」と読みます。
■粉々に砕かれるさまをあらわすので「葉っぱ」よりも「木の材質そのもの(木端)」のほうが、意味として適しています。

【孤立無援(こりつむえん)】
孤立無縁⇒×
■「無縁」は「関係ない、無関係な」「弔うべき子孫が存在しない」といった意味。
■「無援」は「孤独、ひとりぼっち」「誰の助けもない状態」といった意味。
■「こりつむえん」は「誰からの助けもなく一人ぼっちの(窮地)状態」であることから「無援」が意味として適当です。
でも「孤立無援」なだけでなく「孤立無縁」という状態も、実際ありえますね…。