日本語文章ルール 「09:間違えやすい語句(2)」

間違えやすい語句(2)

変換ミスや覚え間違いの多い言葉をいくつかご紹介します(続き)
意外とまちがって覚えている言葉って多いですよね。
ただし、正解(○)か不正解(×)かという部分にはあまりとらわれすぎないでくださいね。

この世に生きるなるべく多くの人に、今同じ意味合いで(想いが)伝わることが、言葉の何よりもまず大事な役割であると思います。無用な逸脱を避けたり文法に従うのは大事ですが、今もっとも最適に伝わると思う生きた言葉を主体的に選んで大事にしてください。
過去の人はあなたがこれから書く文章を読むことはできないし、どの言葉が今と同じ意味で正確に未来永劫ひき継がれていくかなんてわかりませんから…。

実体として死んでいる言葉を「正式だから」といってみけんにしわを寄せて大多数に読まれてもわかってもらえないのに無理して使っても、逆に人同士の円滑なコミュニケーションを阻害する要因になることもあります。
「正確な日本語」は、日本語の「歴史(過去)」として、知っておくことは有益だしおもしろいと思います!
でも、偶然と必然の流れ=自然である言葉の「あるがまま(今)」も同じように愛したいですね。

ちなみに、正確な日本語の使われ方や変遷に細部まで知っておくととても有益だろうなあと思うのは、今よりも昔に書かれた小説やその他書物を読み解くとき。
国語辞書は(「今にかなり近い過去」までの)言葉の用法をまとめたものなので、手元にあるととても役に立ちますね!

【熱にうかされる】
熱にうなされる⇒×
■「うかされる」=「浮かされる」と書き「意識がもうろうとした状態」のこと(日常あまり言いませんね)。
■「うなされる」=「魘される」と書き「良くない夢をみて声を出したり苦しそうにする状態」をさします。
■高熱のせいで夢見が悪くう~んとうなされている状態なら「熱にうなされる」のほうが適当そうですが…。
■「高熱で意識がもどらないでいる(ので目が離せない、心配な)状態」を「熱にうかされる」といいます。

【願わくは/願わくば】
願わくば⇒×?
■正確には「願わくば」は誤用らしいですが、口語では「ば」のほうがメジャーみたいです。
■副詞的、接続詞的に用いられ「ねがわくは」=「かなうことなら…」という意味。
■「ねがいごと」なので、通常「良い事柄」をお祈りします。

【バドミントン】
バトミントン⇒×
■badmintonの和訳なので、文字を素直に追えば「バドミントン」が正式。競技界ではバドミントンで呼称が統一。
■「バド」は言いづらいので(促音のうしろのdはなじみがない音だったため)言いやすく変わったみたい。
■いわゆる和製英語で育った世代(例:Dの発音=デー)は「バトミントン」のほうがしっくりくるかも…。
■「バトミントン」という競技と「バドミントン」という競技があるわけではない点に注意(同じものを指します)。

【愛嬌をふりまく】
愛想をふりまく⇒×
■「愛嬌」は「計算していない、くったくない笑顔やしぐさ」
■「愛想」は「(心とは裏腹でも)社交の場で好ましいとされる、計算された表情」
■「あいきょうをふりまく」は「くったくなく周囲を自然に和やかにしているさま」を表すプラスの意味なので、計算してる「愛想」は不適。
■ただし「愛嬌笑い」≒「愛想笑い」、つまり「愛嬌」の持つ意味のうちの一つが「愛想」なために、よく混同されるようです。
■誤用がメジャーということは、現代は「愛想」を振りまくシーンが多いのかも…?

【人を駆り集める】
人を狩り集める⇒×
■「狩る」は「(獲物の命を)しとめる」という意味。
■「駆り集める」は「急いで集める」という意味だよ。
■「人手をかきあつめる(至急できるだけ多くの協力者を探し集める)」というこの語句の意味を考えれば、「狩り」は誤字とすぐわかるね。

【暇に飽かせて】
暇にまかせて⇒× 
■「暇をもてあそぶ」も誤り
■「暇に飽かせて」とは「(暇が飽きるほどあるので)贅沢に時間を使って」という意味。
■「飽(あ)かす」は少し自嘲、嘲笑、謙遜気味なニュアンスで使われることが多い語ですね。

【瓢箪から駒】
瓢箪から独楽⇒×
■「嘘からでた真<まこと>」などとおなじ意味で「まさかな物事がおきる」「ありえないことがおこる」の意味
■ひょうたんから独楽<こま>が出てきてもびっくりするとは思うけど、「駒<こま>:(在来)馬」が出てきた方がびっくり度は大きいかも。

【明るみに出る】
明るみになる⇒×
■「暗み」=「暗い所」にあった物事が、「明るみ」=「明るい所」に「出る」=「移動する」イメージ。
■「暗い所」が「明るい所」に変化した(暗い所がなくなった)わけではないということだね。闇は深い…。

【汚名返上】
汚名挽回⇒×
■「汚名」=「不名誉なこと」は「取り返す」=「挽回する」ではなく「つっかえす」=「返上する」ほうが望ましいですね。
■「名誉」=「誇りに思えるようなこと」なら挽回して取り戻したいものなので「名誉挽回」といいます。

【大過なく】
大禍なく⇒×
■「過<か>」=「(自分のせいでない場合も含む)あやまち」
■「禍<か>」=「天災、災厄といった人間には太刀打ちできない種類のわざわい」。「禍い」を「わざわい」と広く読まれるけど辞書表記はまだないという現在不思議な漢字の一つです。
■「禍」じたいがスケールの大きなマイナスイメージの語なので、「大」をつけた「大禍」はさらにとんでもないことに…。
■「たいかなく」とは「ちょっとした失敗や問題などはあったけど全体的には無事に」というプラスの意味なので、「ちょっとした失敗やあやまち」を表すには「過」のほうが適当。
■「禍」があった時点で本当にシャレにもなりません…。

【立つ瀬がない】
立つ背がない⇒×
■川のちょっと水深が浅くなっているところが「瀬」。
■「立つ瀬がない」⇒「川の中で足場とすべき場所(瀬)がない」⇒「(人間関係における)立場がない」と転じたようです。

【単刀直入】
短刀直入⇒×
■「たんとう」と聞いたら現代では「短刀」しか思い浮かびませんね。
■武士がいた時代を思い浮かべながら「単刀」=「一人」で「直入」=「まっすぐに突っ込んでいく」イメージをするとラクかも。
■「たんとうちょくにゅう」とは、「唐突に本題にはいること」という意味。