傘をさしているばかりだった僕が最強だったのですが。
傘をさしているばかりだった僕が最強だったのですが。
- 日時: 2022/08/16 16:24
- 名前: ゆき
(ak-yamamoto@etude.ocn.ne.jp)
「あなたの名前は?」
雨の中、手を差し伸べてくれた女のひとがいた。
「僕の、名前は‥‥」
これが僕のはじまりだったんだ。
* * * * * * * *
僕の名前はナツメ。普通の中学生____ではなかった。
僕の周り、正確にいうと半径200メートル以内にはいつも雨が降っている。
つまり、雨男ということだ。
そして、この世界も普通ではない。
この世界は、異世界。皆魔法を扱っている。
こんなことを言える僕はというと____今は人生2回目だ。
前世では何もせずに、誰とも触れ合わずに生きていた。そして____トラックに轢かれて虚しく死んだ。
なぜか、異世界に生まれ、ナツメという名をつけられた雨男に転生していた。
そして今日は“魔法高等学校ルーチェ”の試験当日だ。
その試験では5つの試験で合格点を取らなければならない。
ひとつ目は“magic point”略称“mp”の査定。これが一般量以上あるか。
ふたつ目は“hit points”略称“hp”の査定。これが一般量以上あるか。
みっつ目は“実戦”。選ばれた相手と戦い、それによってポイントが付与される。
よっつ目は“記述”。魔法に関しての知識がどの程度あるか。
いつつ目は“属性”。これがあるかどうか。あったら合格だ。
____この5つだ。
異世界の中で最も難しいと言われている高校だ。
魔法高等学校ルーチェのすぐ隣には魔界の“魔法高等学校チェーニ”がある。イシュ族同士だが、かなり仲がいいみたいだ。
この世界は天界と魔界、霊界の3つに分かれている。
天界は天使などと、一般的に光属性、天属性、風属性、水属性の者が住んでいる。
魔界は悪魔など、闇属性、炎属性、血属性の者が住んでいる。
霊界は霊など、色属性、無属性の者が住んでいる。
3つの世界は完全に“バリア”で区切られており、外に出ることは不可能だ。例外もいるが。
バリアがあることでバランスが保たれているが、もし壊れてしまったらバランスが崩れ、この世界は崩壊してしまう。
この世界のエネルギー源は“コア”といって、それは一度壊れている。それを直したのが、例外____ヴァーという人物。
ヴァーは3つの“界”を行き来していて、今もどこかで旅をしている____らしい。
「さて、いくか」
僕は一階のリビングに降りるため、階段に向かう。
階段を降りると、僕の好きなベリーゼリーの匂いが鼻をくすぐった。
「お母さん、ゼリー作ってくれたの?」
「ええ、今日はナツメの試験の日だもの」
「‥‥! ありがとう!」
僕はゼリーとパンを食べると、靴を履いて玄関に向かった。
「行ってきます!」
扉を開けた瞬間、大雨が降った。
* * * * * * * *
僕は立派な門をくぐった先の校舎のホールの中にいた。
今は第一、二試験。これらは同時に行われる。
順に名前が呼ばれていき、僕の名前が呼ばれた。
そして、中央に設置された台の前に立つ。
そこにいた老人に言われ、水晶に手を置いた。
するとその上に【mp7,00,00,00 hp4,50,00,00】と表示され、老人は目を見開いた。
「あ、あの‥‥なにかあったんですか?」
「これは‥‥前代未聞じゃ‥‥こんなステータスのものは‥‥」
「えっ?」
「あなたはもう合格です‥‥!」
「ちょっと待ってください! どういうことですか!?」
老人に言われた言葉がよく理解できない。
周りの人までざわついてきてしまった。
「‥‥落ち着いて聞いてくださいね。あなたは最強ステータスの持ち主です」
「はっ??」
もっとよく分からないんですけど。最強? この僕が?
そんなわけない。
「あなたはもうSクラス確定です」
「いやでも試験は受けさせてください」
「そうですか‥‥では席にお戻りください」
僕は席についた。すると隣や前から声をかけられた。
「ねえ、あなた名前は!?」
「すごかったね!」
「どうやってあんなステータスに?」
「あわわ‥‥」
僕が戸惑っていると一人の女の子が助けてくれた。
「皆、やめなよ。困ってるじゃん」
「「「えっ‥‥」」」
ショートヘアを金色に染め、それを上の方でまとめて四葉のクローバーのピンで止めた女の子だった。
服はパーカーに緑のチェック柄のミニスカ。口には飴を加えていた。
「だいじょーぶ? キミ引っ込み思案なタイプでしょー? はっきり言わなくちゃダメだよー」
「あ、ありがとうございますっ!」
「ぜんぜーんだいじょーぶだよ。僕はヨツバ。キミはー?」
「ナツメです」
「ナツメくんかー。いい名前!」
ヨツバさんは、初対面の僕の名前を褒めてくれた。
「じゃあね。同じクラスになれたらいいねー」
僕はやっと静かになったので、目を閉じて休憩をしていた。
(次は実戦か‥‥大丈夫かな)
中央に立っていた老人が、何やらメモしていた。
実戦の対戦相手を考えているらしい。
「では、第三試験実戦の対戦相手を発表します」
「「「おお〜」」」
僕は誰とやるんだろう? そう考えていると、名前が呼ばれた。前に出て隣にいたのは____ヨツバさんだった。Page: [1]
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